2006-10-11

近況

夏のあいだ挫けていた洋書道を復活しようと, OS の教科書(タネンバウムのやつ)を読み始めた. まだ導入部分. コンピュータの歴史をたどる.

この手の史料は現存しないものの話が面白い. Google 読み物だったら破れさった検索エンジンの話が面白いのと同じ. だから OS の話で面白いのは Multics までだ. あとはだいたい生きてるからね.

本文中で Multics のファンサイト multician.org が紹介されていた. 覗いてみる. 90 年代後半まではまだけっこう稼動していたらしい. 現存してるじゃん! おどろき. このサイトは他にも(部外者視点からは)かなりどうでもいい読み物が色々あって面白い. たとえば Multics は Emacs 支援のために PL/1 -> Lisp コールバックをサポートしていた話とか. ウヘ.

未来の Analytical Engine

教科書に戻ると, コンピュータの始祖として 18 世紀に考案された Analytical Engine が紹介されている. トランジスタも真空管もない時代に生まれ, 結局完成を見ることのなかった野心作.

タネンバウムは Multics を Analytical Engine みたいなものと評している. うまいこと言うね. Multics は "Boston 一帯の利用者全て" を一手に引き受ける計算資源であろうとした. 今でいうデータセンタみたいなものだろうか. それをひとつのシステムで動かそうというのだから, いかに野心的で無茶なプロジェクトだったかわかる.

さて, 今やこの目標は Google を始めとする大規模システム業界の手で実現されつつある. Analytical Engine は 20 世紀の科学者によって, Multics は 21 世紀の技術者によって実現された...というのは誇張かな. 技術の加速を鑑みると, 20-30 年後には次の Analytical Engine が実現されるのだろう. それがどんなものか想像してみたいけれど, そのためにはまずこの教科書を読まないと. そう自分を動機づけたのでした.